業務改善助成金とは|令和8年度の3コースと上限額、助成額の計算例、車両・パソコンは対象か

最低賃金が毎年大きく上がるなかで、「賃上げと一緒に設備を入れると助成金が出る」と聞いて、業務改善助成金を調べる経営者が増えています。

業務改善助成金は、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を50円以上引き上げ、生産性向上につながる設備投資などを行った場合に、その費用の一部を助成する厚生労働省の制度です。上限は最大600万円です。この記事では、令和8年度の対象事業者、50円・70円・90円の3コースの上限額、助成率、特例事業者、申請期限、助成額の計算例と、車両・パソコン・個人事業主の扱いを順に説明します。

対象になる事業者

令和8年度は、次の条件をすべて満たす事業者が対象です。

・中小企業・小規模事業者であること(大企業と密接な関係がある「みなし大企業」は除く)
・事業場内最低賃金が、令和8年度の地域別最低賃金未満であること
・解雇や賃金の引き下げなどの不交付事由がないこと

申請は、工場や事務所など、労働者がいる事業場ごとに行います。同じ事業場からの申請は年度内に1回までです。過去に業務改善助成金を使った事業者も、もう一度申請できます。

事業場内最低賃金とは、その事業場で一番低い時間給のことです。業務改善助成金では、雇い入れてから6か月を過ぎた労働者の賃金で考えます。月給の人は時間給に直して比べます。直し方は最低賃金の計算方法と同じです。

令和8年度の3コースと助成上限額

事業場内最低賃金をいくら引き上げるか(コース)、何人の賃金を引き上げるか、事業場の規模で、助成上限額が決まります。

コース(引上げ額)引き上げる労働者数事業場規模30人未満30人以上
50円コース(50円以上)1人40万円30万円
2〜3人70万円40万円
4〜5人70万円70万円
6〜7人90万円90万円
8人以上110万円110万円
10人以上(特例事業者)130万円130万円
70円コース(70円以上)1人50万円40万円
2〜3人100万円50万円
4〜5人130万円130万円
6〜7人180万円180万円
8人以上230万円230万円
10人以上(特例事業者)300万円300万円
90円コース(90円以上)1人100万円90万円
2〜3人240万円150万円
4〜5人270万円270万円
6〜7人360万円360万円
8人以上450万円450万円
10人以上(特例事業者)600万円600万円

「引き上げる労働者」に数えられるのは、事業場内最低賃金の労働者と、その引上げで賃金額を追い抜かれる労働者のうち、コースの額以上に賃金を引き上げた人です。週の所定労働時間が20時間以上で、雇用保険に入っている人が対象です。すでに引上げ後の事業場内最低賃金以上の賃金をもらっている人は数えません。

助成率と特例事業者

助成率は、申請する事業場の引上げ前の事業場内最低賃金で決まります。

引上げ前の事業場内最低賃金助成率
1,050円未満4/5
1,050円以上3/4

次のどちらかに当てはまる事業者は「特例事業者」になり、10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合に、上の表の「10人以上」の上限額を使えます。

・賃金要件:申請事業場の事業場内最低賃金が1,050円未満
・物価高騰等要件:原材料費の高騰などの外的要因で、申請前6か月間平均の利益率が前年度より3%ポイント以上下がっている

物価高騰等要件に当てはまる特例事業者は、通常は対象外のパソコンなども助成対象になります(後述)。原材料の値上がりを確かめるときは、企業物価指数の推移(品目別)も参考になります。

助成額の計算方法と計算例

助成額は、次の2つのうち安いほうです。

① 設備投資などにかかった費用 × 助成率 ② コース・人数・規模で決まる助成上限額

例1:事業場内最低賃金1,040円、8人を1,130円まで引き上げ(90円コース)、設備投資600万円
助成率は4/5(1,050円未満)なので、600万円 × 4/5 = 480万円。90円コース・8人以上の上限額は450万円なので、助成額は450万円、自己負担は150万円です。

例2:事業場内最低賃金1,060円、30人未満の事業場で2人を1,130円まで引き上げ(70円コース)、設備投資80万円
助成率は3/4(1,050円以上)なので、80万円 × 3/4 = 60万円。70円コース・2〜3人・30人未満の上限額は100万円なので、助成額は60万円、自己負担は20万円です。

自社の数字で計算したい場合は、業務改善助成金シミュレーターで、都道府県と今の時給・引上げ後の時給・人数・設備投資の額を入れると、コース・助成率・助成額と、その都道府県の申請期限がわかります。

賃上げは毎年の人件費の増加にもつながります。助成額だけでなく、引上げ後の人件費がどれだけ増えるかもあわせて確かめておきましょう。人件費の考え方は人件費の原価計算で解説しています。

申請期限と賃上げのタイミング

項目期限
申請期間令和8年9月1日 〜 申請する事業場の都道府県の地域別最低賃金の発効日の前日、または11月30日のどちらか早い日
賃金を引き上げる期間令和8年9月1日 〜 地域別最低賃金の発効日の前日
事業の完了期限交付決定を受けた年度の1月31日

申請期限は都道府県ごとに違います。地域別最低賃金の発効日が10月1日の都道府県なら9月30日まで、12月1日の都道府県なら11月30日までです。都道府県ごとの発効日は最低賃金の全国一覧で、申請期限は業務改善助成金シミュレーターで確認できます。

賃金の引上げは、地域別最低賃金の発効日の前日までに完了させる必要があります。発効日の当日に引き上げた場合は対象外です。あわせて、次の点にも注意します。

・引上げ後の事業場内最低賃金と同じ額を、就業規則などに定める
・事業場内最低賃金を何回かに分けて引き上げることはできない
・予算の範囲内で交付するため、申請期間の途中で募集が終わることがある

対象になる設備投資と、車両・パソコンの扱い

対象は、生産性の向上につながる設備投資などです。リーフレットでは、POSレジシステムの導入による在庫管理の短縮、リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮、国家資格者による業務フローの見直し(経営コンサルティング)、顧客管理情報のシステム化などが例に挙がっています。

車両:令和8年度から、特殊用途自動車を除く自動車は助成の対象外になりました。以前は特例として認められていた一般の車両は、使えなくなった点に注意が必要です。

パソコン・スマートフォン・タブレット:通常は対象外です。特例事業者のうち物価高騰等要件に当てはまる場合に限り、新規導入が対象になります。

交付決定の前に買ったものは対象外です。設備の発注・購入は、必ず交付決定を受けてから行います。

令和7年度からの主な変更点

・コースが50円・70円・90円の3つになり、事業場内最低賃金を50円以上引き上げることが前提になった
・特殊用途自動車を除く自動車が対象外になった
・引き上げる対象労働者が、雇用保険の被保険者になった
・物価高騰等要件の利益率の計算が、「最近3か月間のうち任意の1月」から「最近6か月間平均」になった

申請の流れ

事業場の所在地を管轄する都道府県労働局に、交付申請書と事業実施計画書を出します。審査を経て交付決定を受けたら、計画どおりに賃金の引上げと設備の導入・支払いを行い、事業実績報告書と支給申請書を出します。報告内容が審査で認められると、交付額が確定し、助成金が振り込まれます。助成金は後払いなので、設備代はいったん自社で立て替えることになります。資金が足りない場合は、資金調達の方法も検討しておきます。

よくある質問

令和8年度は、特殊用途自動車を除く自動車は助成の対象外になりました。リフト付きの送迎車のような特殊用途の車両は、生産性向上につながるものであれば対象になり得ます。

通常は対象外です。特例事業者のうち物価高騰等要件(申請前6か月間平均の利益率が前年度より3%ポイント以上低下)に当てはまる場合に限り、パソコン・スマートフォン・タブレットなどの新規導入が対象になります。

中小企業・小規模事業者であれば、個人事業主も対象になります。ただし、賃金を引き上げる労働者(雇用保険の被保険者)がいる事業場であることが前提なので、事業主本人だけで働いている場合は対象になりません。

まとめ

業務改善助成金は、事業場内最低賃金を50円以上引き上げ、生産性向上につながる設備投資などを行うと、費用の一部が助成される制度です。令和8年度は50円・70円・90円の3コースで、助成額は「設備投資の額×助成率」と上限額の安いほうです。申請と賃上げの期限は、都道府県の地域別最低賃金の発効日で決まるので、早めに確かめておきましょう。

出典と確認日

この記事の要件・上限額・助成率・期限は、厚生労働省のリーフレット「令和8年度業務改善助成金のご案内」と、厚生労働省「業務改善助成金」のページに基づいています。最新のリーフレットや交付要綱は、このページから確認できます。最終確認日:2026年10月12日。業務改善助成金の内容は年度ごとに変わるため、毎年の公表に合わせて更新します。申請の前に、必ず最新の交付要綱・要領で要件を確かめてください。

戻る