法人と同じように、個人事業主にも銀行融資や日本政策金融公庫といった資金調達の選択肢があります。 ただし個人事業主には、決算書の代わりに確定申告書で事業実績を示す必要があったり、 法人にはない「マル経融資」や「小規模企業共済の貸付制度」といった個人事業主向けの制度があったりと、 法人向けの資金調達方法とは異なる注意点があります。
この記事では、個人事業主が検討できる代表的な資金調達方法の特徴を比較しながら、 開業からの状況や資金の使いみちに応じてどれを優先すべきかを解説します。
資金の使いみち、必要なスピード、開業からの状況を選ぶと、検討すべき資金調達方法の候補を確認できます。 あくまで簡易的な目安のため、実際の判断は商工会議所や金融機関、税理士にも相談してください。
資金の使いみち、必要なスピード、開業からの状況を選ぶと、 個人事業主が検討すべき資金調達方法の候補を確認できます。
個人事業主が使える資金調達方法は、法人と共通するものと、個人事業主・小規模事業者に限定されるものに分かれます。 まずは代表的な方法を一覧で比較します。
| 方法 | 対象 | スピード | コスト目安 | 審査のポイント |
|---|---|---|---|---|
| 日本政策金融公庫(創業融資・一般貸付) | 個人事業主・法人共通 | 2〜4週間 | 低金利 | 開業前・開業間もない事業者でも利用しやすい |
| マル経融資(小規模事業者経営改善資金) | 個人事業主・小規模事業者向け | 1〜2ヶ月 | 低金利・無担保無保証人 | 商工会議所・商工会の経営指導を受けていることが条件 |
| 制度融資(信用保証協会) | 個人事業主・法人共通 | 3〜6週間 | 低金利+保証料 | 保証協会の保証により実績が浅くても通りやすい |
| 小規模企業共済の貸付制度 | 共済加入者限定 | 数日程度 | 低金利(掛金の範囲内) | すでに共済に加入し、掛金を積み立てていることが前提 |
| ビジネスローン | 個人事業主・法人共通 | 即日〜数日 | 高金利 | スピード重視、審査は比較的通りやすい |
| ファクタリング | 個人事業主・法人共通 | 即日〜数日 | 手数料(数%〜) | 自社の信用力より売掛先の信用力が重視される |
日本政策金融公庫は、政府が全額出資する政策金融機関です。個人事業主・法人を問わず利用でき、 民間の金融機関では融資が難しい開業前・開業間もない事業者でも、比較的利用しやすい制度が用意されています。
開業前後の個人事業主が最初に検討する調達先の候補になることが多く、創業計画書の作成が必要になるため、 早めに準備を始めておくことが重要です。
マル経融資は、法人にはあまり使われず、個人事業主・小規模事業者がよく検討する制度です。 商工会議所・商工会の経営指導員から一定期間の経営指導を受けたうえで、 日本政策金融公庫が無担保・無保証人・低金利で融資を行います。
経営指導を受ける必要があるため申し込みから実行までに時間がかかりますが、 担保や保証人を用意しにくい個人事業主にとって、コスト面で有利な選択肢です。
法人も含めた資金調達方法の全体像は 資金調達方法の選び方 で、プロパー融資やファクタリングとの違いも含めて比較しています。
制度融資とは、地方自治体・金融機関・信用保証協会が連携して行う融資制度です。 信用保証協会が保証人の役割を果たすため、開業してからの実績が浅い個人事業主でも、 銀行から融資を受けやすくなります。
保証料が別途かかる分、金利自体はプロパー融資よりやや低く設定されていることが多く、 開業初期や実績を積んでいる途中の個人事業主にとって、有力な選択肢のひとつです。
小規模企業共済にすでに加入している個人事業主であれば、積み立てた掛金の範囲内で、 比較的スピーディーに借り入れできる貸付制度を利用できます。
ただし、これは共済に加入し掛金を積み立てていることが前提の制度のため、 これから資金調達を検討する開業前の個人事業主がすぐに使える方法ではありません。 将来の資金調達手段の選択肢を広げる意味で、余裕があるうちに共済への加入を検討する価値はあります。
ビジネスローンはノンバンク系の金融会社が提供する事業者向けローンで、審査がスピーディーな点が特徴です。 ファクタリングは保有する売掛金を売却して早期に現金化する方法で、融資ではないため負債として計上されません。
どちらもスピード重視の資金調達手段ですが、ビジネスローンは金利が、ファクタリングは手数料が、 公庫や制度融資と比べて高めになる点には注意が必要です。急な資金需要への一時的な対応として使い、 恒常的な資金調達手段としては金利・手数料の負担が大きくなりすぎないようにしましょう。
個人事業主が資金調達方法を選ぶときは、次の3つの観点で整理すると判断しやすくなります。
開業前・開業間もない個人事業主は、まず日本政策金融公庫の創業融資を検討し、 経営指導を受けられる環境であればマル経融資も選択肢に加えるのが基本です。 今すぐの資金ショートを避けなければならない場面では、ファクタリングやビジネスローンのような スピード重視の手段を検討することになります。
公庫やマル経融資、制度融資など、借入による調達を検討する場合は、 申し込む前に毎月の返済額を試算しておくことが重要です。 個人事業主は生活費と事業資金の境目があいまいになりやすく、 借入額が同じでも、金利や返済期間の設定によって毎月の返済負担は大きく変わります。
「借りられる金額」と「無理なく返済できる金額」は別物です。 毎月の返済額が事業と生活の資金繰りを圧迫してしまうと、 せっかく調達した資金でかえって苦しくなることもあります。 借入額・金利・返済期間を変えながら、毎月の返済額と返済スケジュールを事前に確認しておきましょう。
借入額・金利・返済期間を入力するだけで、毎月の返済額と返済スケジュールを試算できる無料ツールです。 申し込む前に、資金繰りにどれだけの負担がかかるかを具体的に確認できます。
個人事業主の資金調達方法には、法人と共通する日本政策金融公庫・制度融資・ビジネスローン・ファクタリングに加えて、 マル経融資や小規模企業共済の貸付制度など、個人事業主・小規模事業者ならではの選択肢があります。
開業からの状況、必要なスピード、許容できるコストを整理したうえで、複数の選択肢を比較検討することが、 無理のない資金調達につながります。借入を選ぶ場合は、申し込む前に返済シミュレーションで 毎月の負担額を確認しておきましょう。