事業計画書の数値計画の作り方|売上・原価・利益を分解して考える実務ポイント

事業計画書の中でも、特に重要なのが数値計画です。金融機関や投資家は、事業の内容そのものだけでなく、「その売上や利益は本当に実現できるのか」を数値面から確認します。

しかし実際には、売上や原価、利益を何となく置いてしまい、根拠の説明が弱くなるケースも少なくありません。数値計画で大切なのは、大きな数字を見せることではなく、どのようにその数字になるのかを分解して説明できることです。

本記事では、事業計画書の数値計画をどのように作ればよいのかを、売上の分解、費用の考え方、アクションプランとのつなげ方、業種別サンプルまで含めて具体的に解説します。

売上は「単価×数量」に分解して考える

売上計画を作るときは、まず「単価×数量」に分解します。売上を一つの金額として置くのではなく、いくらの商品やサービスが、何件売れるのかを明確にする考え方です。

たとえば、1件あたりの契約単価が10万円で、年間30件の契約を見込む場合、売上は300万円になります。このように単価と数量に分けることで、売上の根拠が見えやすくなります。

さらに実務では、数量をそのまま置くのではなく、見込み客の数から逆算することが重要です。展示会やWeb集客、紹介などで獲得するリード数、そこから商談化する割合、成約に至る割合まで分解して考えると、数値計画の精度が上がります。

前提となる利益水準や原価の妥当性を確認したいときは、原価計算ツールを使って試算しておくと、無理のない計画にしやすくなります。

費用は「変動費」と「固定費」に分ける

費用計画では、支出をまとめて考えるのではなく、「変動費」と「固定費」に分けることが重要です。この分け方をしておくと、売上が増えたときにどのくらい利益が残るのか、逆に売上が落ちたときにどのくらい固定費負担が重くなるのかが見えやすくなります。

変動費とは、売上に連動して増減する費用です。仕入費、外注費、販売手数料、決済手数料などが代表例です。一方で固定費は、売上の大小にかかわらず毎月一定で発生しやすい費用で、人件費、家賃、システム利用料、通信費などが該当します。

変動費の根拠は原価率で整理すると分かりやすい

変動費は、項目を細かく積み上げる方法もありますが、事業計画書では原価率として整理すると分かりやすくなります。

たとえば、商品販売に伴って仕入費と配送費が売上に応じて発生する場合は、「仕入費、配送費が売上連動で発生するため、原価率を35%とする」といった書き方ができます。

このように書けば、売上が増えた際に原価も一定の割合で増加する前提が伝わります。原価率は、過去実績、既存の見積もり、業界平均などを参考に置くと、より現実的な数字になります。

固定費の根拠は毎月発生額から積み上げる

固定費は、毎月どの費用がいくら発生するのかを整理して、年間金額に置き換えると計画が作りやすくなります。

たとえば、人件費が月40万円、家賃が月15万円、通信費やシステム利用料などのその他固定費が月10万円であれば、月額固定費は65万円です。年間では780万円となります。

事業計画書では、「人件費、家賃、システム利用料が毎月固定で発生するため、年間固定費を780万円とする」といった書き方ができます。

特に人件費は金額が大きく、採用人数や給与水準で大きく変わるため、人件費シミュレーションで事前に確認しておくと、計画全体の精度が上がります。

収益計画はアクションプランとセットで考える

数値計画は、単なる願望の数字ではなく、営業活動や集客施策の結果として組み立てる必要があります。つまり、売上計画の裏には必ずアクションプランが必要です。

たとえば1年目は、展示会出展によって見込み客を集める計画を立てることができます。2年目には展示会に加えてDM送付やコンテンツサイトの立ち上げを行い、リード獲得経路を増やします。3年目にはコンテンツサイト経由の問い合わせが増え、4年目にはYouTubeチャネルを立ち上げて認知拡大を図る、といった流れです。

このように、各年度でどの施策を行い、その施策から何件のリードが発生し、何件の契約につながるのかを示せると、売上計画の説得力が大きく高まります。

数値計画は表でまとめると全体像が伝わりやすい

文章で考え方を説明したら、最後は表でまとめます。事業計画書では、直近実績と今後5年間の推移を並べる形が一般的です。売上、原価、販管費、営業利益を一覧化すると、いつ黒字化するのか、どの年度で費用負担が大きいのかが見えやすくなります。

項目 直近 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
売上 300万円 600万円 1,000万円 1,500万円 2,100万円 2,800万円
原価 90万円 180万円 300万円 450万円 630万円 840万円
原価率 30% 30% 30% 30% 30% 30%
販管費 720万円 780万円 900万円 1,050万円 1,200万円 1,350万円
営業利益 ▲510万円 ▲360万円 ▲200万円 0万円 270万円 610万円

この表はあくまでサンプルですが、赤字から黒字に転換するまでの流れや、売上拡大に対して原価率と固定費がどう影響するかを見せる例として使えます。自社の計画に合わせて金額を差し替えることで、実務にそのまま応用できます。

BtoB事業の数値計画サンプル

BtoBの受託業務や法人向けサービスでは、展示会、紹介、Web問い合わせなどを起点にして案件を獲得するケースが多く見られます。この場合は、契約件数を「リード数→商談数→成約数」で分解すると計画を作りやすくなります。

たとえば、平均契約単価を50万円、1年目の契約件数を12件とすると、年間売上は600万円です。12件の契約を獲得するために、年間120件のリードを集め、商談化率30%で36件の商談を行い、そのうち成約率33%で12件受注する、という考え方です。

項目 内容
平均契約単価 50万円
年間リード数 120件
商談化率 30%
商談件数 36件
成約率 33%
年間契約件数 12件
年間売上 600万円

BtoB事業では、展示会への出展、紹介パートナーの開拓、問い合わせ導線の強化といった施策が、そのまま数値計画の根拠になります。行動と数字を結び付けやすい点が特徴です。

SaaS事業の数値計画サンプル

SaaSでは、売上を月額課金と契約アカウント数で考えることが基本です。つまり、「月額単価×契約社数」でMRRを算出し、その年間累計で売上を見ます。

たとえば、月額利用料を3万円、1年目末の契約社数を20社と見込む場合、月間売上は60万円です。年間では導入の積み上がり方に応じて売上が変動しますが、簡易的には平均契約社数を10社と置けば、年間売上は360万円程度になります。

項目 内容
月額単価 3万円
初年度獲得社数 20社
平均契約社数 10社
平均月間売上 30万円
年間売上 360万円

SaaSの数値計画では、獲得社数だけでなく、解約率や継続率も重要です。広告出稿、コンテンツマーケティング、営業代行などの施策によって新規顧客を獲得しつつ、サポート体制やプロダクト改善によって解約を抑える設計が必要になります。

店舗型ビジネスの数値計画サンプル

飲食店やサロン、小売店などの店舗型ビジネスでは、「客単価×来店数」で売上を計算します。さらに来店数は、営業日数と1日あたりの来店客数に分けると考えやすくなります。

たとえば、客単価が3,000円、1日あたりの来店客数が20人、営業日数が月25日の場合、月商は150万円です。年間売上は1,800万円になります。

項目 内容
客単価 3,000円
1日あたり来店客数 20人
営業日数 月25日
月商 150万円
年間売上 1,800万円

店舗型では、原価率、人件費率、家賃比率が利益を大きく左右します。集客施策としては、チラシ、SNS運用、口コミ促進、リピート施策などが売上計画の根拠になります。店舗数の拡大や営業時間の延長なども、来店数の増加要因として計画に落とし込めます。

数値計画は業種に合った分解方法を選ぶことが大切

ここまで見てきたように、数値計画の基本は同じでも、業種によって分解の仕方は変わります。BtoBなら単価と契約件数、SaaSなら月額単価と契約社数、店舗なら客単価と来店数というように、売上の作られ方に合わせて設計することが大切です。

そのうえで、費用を変動費と固定費に分け、さらに年度ごとのアクションプランと結び付ければ、単なる予想ではなく、実行可能性のある数値計画になります。

数値計画は「説明できること」が最大の強みになる

事業計画書の数値は、見栄えのよい数字を並べることが目的ではありません。読み手に対して、「この売上はこうやって作る」「この費用はこういう理由で発生する」と説明できることが、最も大きな説得力になります。

売上を単価と数量に分けること、費用を変動費と固定費に分けること、さらに施策との関係まで示すことができれば、数値計画はぐっと現実的になります。事業計画書を作るときは、まず数字そのものではなく、数字の裏側にあるロジックを整理するところから始めるのが実務上のポイントです。

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